2019/04/25

地域のがん患者に最新の放射線治療を。

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高齢のがん患者にも福音。
ピンポイント照射でがん病巣を叩く高精度の放射線治療装置を導入。

公立西知多総合病院

放射線治療は、手術療法や化学療法と並ぶ、がんの三大療法の一つである。
公立西知多総合病院では、新たに放射線治療施設を建設し、愛知県下で4台目となる
最新放射線治療装置〈トモセラピー・ラディザクト〉を導入。平成31年4月、
名古屋市立大学医学部・放射線医学教室のバックアップのもと、低侵襲の放射線治療を開始する。

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正常な組織への副作用を軽減できる最新の放射線治療。

平成31年3月、放射線治療施設が完成したばかりの公立西知多総合病院を訪ねた。施設内では2名の放射線技師が、新たに導入した放射線治療装置トモセラピー・ラディザクトの最終動作確認を入念に行っていた。この装置はIMRT(強度変調放射線治療)対応可能なトモセラピーの最新機種。IMRTとは正常組織へあたる放射線量を極力少なくし、がんの形や大きさ、場所に合わせて、がん病巣をピンポイントで照射する低侵襲の治療法だ。2人はこの装置を使いこなすため、名古屋市立大学病院や関連の高度急性期病院で研修を受け、実際に診療に関わり、一連の流れを経験してきた。新規治療への意気込みを聞いた。「検査では患者さんに接するのは1回限りですが、治療では継続的なおつきあいになります。その自覚を持って、患者さんをしっかり支えていきたい」と久米竜哉。一方、長谷川信司は「新しい治療だからと気負い過ぎることなく、患者さんの安全第一に正しく装置を使いこなしたい」と話す。この放射線治療のために、同院の看護師も他院でみっちり研修を積んできた。研修を終えた竹内亜由美、古岩井邦江は、現在、放射線治療に関わる看護マニュアルを制作しているところだ。「現在、外来や病棟看護師向けの勉強会を実施中です。どの部署の看護師であっても、放射線治療について理解できるようにしたいと考えています」と熱意を込めて話す。

同院ではこの4月、名古屋市立大学病院から非常勤医師を2名招聘し、ラディザクトを用いた放射線治療がスタートする。その体制づくりに尽力した名古屋市立大学大学院 医学研究科放射線医学分野の芝本雄太教授は、次のように語る。「知多半島で、最先端の放射線治療が始まることは、地域の患者さんの大きな福音になると思います。手術療法、化学療法に加え、副作用の少ない放射線治療を同じ地域で受けることができるわけですから」。IMRTはどんな患者に適用されるのだろう。「たとえば、条件を満たした早期がんであれば、放射線治療だけで完治が望めます。また、手術療法や化学療法と併用し、治療成績を上げることもできます。進行がんに対しても、全身に広がるがんでなければ、放射線で病気の進行を制御していくことができます。どのステージにおいても、重要な治療戦略の一つとなります」と芝本教授は説明する。

日本ではこれまで、がんは〈切って治す〉のが第一選択だった。しかし、放射線治療の進歩によって副作用なく完治できる症例も増えている。従来のがん治療の主役は手術療法だったが、「これからは放射線療法、あるいは放射線+化学療法が主役になる場面も増えていくと思います」と芝本教授は語る。

QOLを保ち、がんとともに生きるために、放射線治療という選択。

公立西知多総合病院が新たに放射線治療に挑戦し、ラディザクトによるIMRTを導入したのは、どんな狙いがあるのだろうか。外科医であり、院長である浅野昌彦に聞いた。「ベースにあるのは、超高齢社会の進展です。高齢になれば当然、発がん率も高まります。しかし、高齢患者さんへの手術は、体の負担が大き過ぎます。抗がん剤も副作用が強く、リスクが大きい。IMRTなら、副作用を抑えながら、ご高齢の方にも治療できると考えました」。体力が弱く、治療をあきらめていた高齢患者に一筋の希望の光となるのが、IMRTなのである。「若い人と違い、高齢者の場合、最大限の治癒をめざすよりも、がんの進行を制御しながら、QOL(生活の質)を維持することが大切。残りの人生をどう生きるか、という観点に立つと、IMRTは非常に有効な選択肢になります」と、浅野は語る。

同院ではさしあたり、外科をはじめ、泌尿器科、乳腺外科、婦人科などのがん患者を対象に、慎重に治療法を検討した上でIMRTを適用していく予定だ。さらに、浅野はこの最新治療を知多半島全体の医療資源として役立てていく方針を打ち出している。「当院だけでなく、地域で活用していくことが非常に大事だと考えています。これまで遠方の病院に紹介していたケースでも、地域で治療が受けられれば、患者さんにとってこれほどいいことはありません。この地域でがん診療に心血を注いでいる先生方に、治療戦略の一環としてIMRTを使っていただけるような体制づくりを推進していきます。当院の放射線技師や看護師たちも、その心積もりで準備を進めているところです」。浅野がめざすゴールは、地域の医師たちを結ぶ、がん診療のネットワークづくりなのだ。「地域の先生方と一緒に、この地域のがん患者さんが望む治療、望む生活を実現していきたいと思います」。浅野は静かな決意を込めてそう語った。

手術療法、化学療法に、放射線療法が加わり、がん三大療法を提供する体制が整った公立西知多総合病院。「今後はがん診療の地域連携パスづくりにも力を注いでいきたい。地域の病院、診療所の先生方と一緒になって、がんになっても安心して暮らしていける地域を作っていきたい」と浅野院長は意欲を燃やす。

COLUMN

  • 放射線治療は手術と同じように、がん病巣に対する局所治療である。しかし、手術とは違い、がんを切除しないため、臓器を温存でき、治療後のQOLを保てるメリットがある。但し、放射線治療の弱点は、放射線が周囲の正常な細胞まで傷つけてしまうことだった。その問題に対応したのが、IMRT(強度変調放射線治療)である。正常組織へあたる放射線量を少なくし、精度の高い照射を可能にした。
  • 最新治療装置のトモセラピー・ラディザクトは治療の前にCT撮影を行い、がん病巣の位置を正確に把握。体型の変化も考慮した正確な放射線照射を実現する。また、小さながん病巣へのピンポイント照射はもちろん、複雑ながん病巣や広範囲の病巣への治療も可能である。IMRTの対象疾患は、固形がん、悪性リンパ腫など、実に幅広い。転移がなく局所に治療できるがんであれば、低侵襲の放射線治療が有効な治療法となるだろう。

BACK STAGE

地域完結の診療体制でがん患者を支えていく。

  • 日本では、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなるという。超高齢社会の進展にともない、高齢のがん患者が増え、がんとともに生きる人もまた増え続けている。がんの治療は従来、最大限の治癒、すなわち完治をめざし、手術や抗がん剤などあらゆる手段を尽くすのが当然だった。それがここに来て、風向きが変わってきた。進行がんの見つかった高齢患者のなかには、体への負担や副作用を考慮し、〈治療しない〉道を選ぶケースが多くなってきているという。
  • 公立西知多総合病院が導入したラディザクトによるIMRTは、高齢患者にとって、身体への負担や副作用を抑えながら、がんの進行を制御することができれば、生活の質を維持することも可能になる。同院が作ろうとしている地域のがん診療ネットワークは、がんを抱えながら在宅で療養する人々を支えていくことに繋がっている。

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  • 地域医療機関や企業・教育機関等、看護職のサポーターを引き受けていただいた皆様と一緒に、看護職のためのライブ感のたっぷりな有意義な情報をお届けします。

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