2018/12/07

地域の安全・安心、その 〈要〉となる看護師の育成。

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「高度急性期病院と生活を繋ぐために、私たちの看護はあります」。

医療法人 済衆館 済衆館病院

「私たちは変わります。次代に最適な教育を創るために」。
済衆館病院の看護師募集冊子には、この言葉が記されている。
なぜ変わるのか、何が最適なのか——。同院の看護部教育改革に迫る。

〈やさしさ〉を持ち、〈人を見る〉看護師。その育成に全力を注ぐ。

池林明美病棟科長は、看護部教育委員会の委員長である。教育統括の川口万友香看護副部長、そして病棟科長や主任たちとともに、済衆館病院看護部の教育改革に取り組んでいる。「教育は、自分たちのための未来への投資です。みんなで知恵を出し合っています」と言う。
取り組みは、教育指標の見直しから始まった。まずは、段階別教育。日本看護協会のラダーをベースに、同院の独自性を打ち出したものを開発。「中途採用が多かったこれまでは、基礎的な看護技術より経験に合わせた教育が主軸でした。でも今後は新卒採用にも力を入れていきますから、新人・中堅・ベテランに分けた実践能力の目安を創りました」(池林)。研修は講義だけでなく、グループワーク形式も設け、テーマには多重課題も導入した。また、入職一年目看護師へのプリセプター制度は、1対1だったものを、入職2年目・3年目・ベテランがチームを組み、3対1の形に変更。そして、部署別教育については、自分で自分の目標と実施計画を立てる自己目標管理システムとし、病棟科長による評価を行っている。加えて、外部講師を招いての看護科長研修会(コラム参照)を新たにスタート。教える人を教えることにまで目を配っている。  

「将来的には…」と池林は言う。「部署ローテーション研修を設けたいと、川口副部長とは話し合っています。当院にあるさまざまな病棟、外来、さらには訪問看護まで、いくつもある部署をローテーションで学ぶことができれば、総合的な看護実践能力が身につき、横の繋がりを強くすることもできます。現場の負担をどう少なくするかなど、クリアすべき問題があり、まだまだビジョンの段階ですけどね」と池林は微笑む。
こうした教育を通して、どのような看護師を育てたいのか。池林は言う。「〈人を見る〉看護師ですね。疾患や病期を理解した看護実践はもちろんですが、一人ひとりの患者さんの生活背景まで見つめ、必要なところに手を差し伸べられる。患者さんとご家族に寄り添っていける看護師です」。そのために必要な資質はなんだろうか。「私は〈やさしさ〉だと思います。単に人当たりがいいという意味ではなく、この人のために、何かしてあげたいと思える。その人の身になって考えられる。ときには厳しいことも言える。それは人間に興味を持ち、人間味があるということ。看護師として大切だと思います」。  

池林は、済衆館病院に来るまで、在宅・外来・急性期・手術室など、さまざまな看護を経験してきた。
「そのなかで感じたのは、病気ではなく、その患者さんの生活背景を見ることの大切さです。当院では一つの病院で、いくつもの看護を経験できます。その環境を活かして、看護師には、看護の本質を掴んでほしいですね」。

 

 

めざすのは、患者の人生に寄り添う看護のスペシャリスト。

なぜ今、同院は看護師の教育改革に力を入れるのか。理由は、二つの変化である。一つは、超高齢化という時代の変化。今後、主となる高齢者医療には、病気を治すだけではなく、たとえ治らなくても、病気を抱えながらいかに生活の質を保つかが重要だが、そのためには生活までを見通した医療提供が必要となる。そして二つには、こうした時代の変化を捉え、病院改革に取り組んできた済衆館病院自体の変化がある。現在では、病床数369床、二次救急・急性期・回復期・地域包括ケア・緩和ケア・療養・訪問看護までをカバーするスーパーケアミックス病院であり、高度急性期医療と生活を繋ぐ病院として進化を遂げてきた。
二つの変化において鍵を握るのは、「看護力です」と川口副看護部長は言う。「医療のあり方と病院のあり方の変化。それを踏まえて将来を見越していくと、当院はこれまで以上に、医療と生活を繋ぐ力が必要になります。その繋ぎ役は、医療と生活の両方を知っている看護師です。ただ、看護部でいうと、人材を育てる仕組みが弱かったことは否めません。もっと看護力を強化させるためにも、次代を担う看護師を育てなければと考えます」。 池林に、済衆館病院の看護師の魅力を聞いた。「教育のベース、研修システムがもっと進めばですが…」と前置きし、こう言葉を繋いだ。「ある疾患・病期に特化した看護のスペシャリストというより、患者さんの人生に寄り添う看護のスペシャリストになれることです。地域密着という当院の性格を考えると、地域の安心・安全を守る使命があります。つまりそれは、看護師にとっても同様であり、そのためには地域と人々の生活を深く見つめる目が必要になります。大切なのは、患者としてこの病院にいるときだけを支えるのではなく、在宅に戻り充実した生活をどう生きるかまで視線を伸ばすこと。当院にある急性期から在宅までのステージを理解し、看護の総合性を身につけ、患者さんの人生に寄り添う看護を実現させてほしいですね」。  

 

「教育の場は、情報共有の場です」。こう語るのは、川口だ。
「救急医療から在宅医療まで、当院には看護の広がりがあります。でもそれはともすれば、領域ごとの分断に陥ります。教育という機会を通して、異なる部署の看護師と一緒に学び、違う領域の看護を知ることで、一つに繋がる看護にしたいですね」。

 

COLUMN

●看護師の階層に合わせた教育は、多くの病院が行っている。だがそれだけに留まらず、済衆館病院看護部では、教える側に立つ看護師への教育にも力を入れている。「看護科長研修会」がそれだ。
●招いた講師は、中井加代子氏。中井氏は、看護教育機関、行政機関での経験が豊富であり、公益社団法人愛知県看護協会会長を経て、現在は日本看護協会監事、愛知県看護協会監事、NPO法人看護の広場理事長を務めている。
●研修会のテーマは「看護科長のリーダーシップ 〜クリニカルラダーの活用を踏まえて〜」。クリニカルラダーの活用を踏まえたうえで、組織的役割遂行能力や自己研修・研究能力の向上に焦点を当て、リーダーとしてのあるべき姿に迫った。
●「科長や主任は、実際に教えたり、教育を企画したりする人です。それには当院の看護教育への共通理解が不可欠です。これからもこうした研修会を重ねていきたいと思います」(池林)。

 

BACK STAGE

看護師としての自立をめざし、教育を通して看護改革に挑む。 ●本文でも紹介したとおり、時代と医療環境の変化のなかで、済衆館病院は、高度急性期医療と生活を結ぶ病院として自らを位置づけ、二次救急、急性期からいくつも病期をカバーする病院として新たな歩みを進めている。
●高度急性期医療と生活を結ぶ間には、さまざまな病期がある。当然ながらそのいずれにも対応した看護体系と、それに基づく教育が必要となる。
●同院では、看護部教育委員会が中心となり、看護の教育改革を進めているが、教育統括でもある川口副看護部長は、「看護教育は、看護師としての自立です」と言う。「単なる医師の補佐役ではなく、専門性の高い職業人であるならば、自分たちを高める教育は、自分たちの手で創り上げることが大切だと思います」。
●その言葉からは、単に看護の実践能力の向上だけをめざす教育改革ではなく、看護改革にも通じる決意と覚悟を感じることができる。

 

 

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記事投稿者プロフィール
  • 愛知県北名古屋市にある、ケアミックス型の2次救急病院です。27の診療科を有し、急性期から終末期まですべての病期に対応する病床機能(全369床)と在宅支援機能...

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