2018/12/06

最先端の腹腔鏡手術を〈支える〉を極める。

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医師を支え、患者を支える。
成長と達成感が得られる手術室看護という専門領域。

野口建太
医療法人 山下病院

消化器分野の専門病院として知られる山下病院。
消化器外科における総手術件数は、年間400件以上。そのうち、腹腔鏡下手術は75%を超える。
さらに、難易度の高い食道、肝臓、胆のう、膵臓の手術も幅広く手がけ、優れた実績をあげている。
その高度で専門性の高い手術を担当する看護師、野口建太の姿を追った。

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特殊な知識と技能、的確な判断力が要求される、消化器専門病院の手術室看護。

その日、山下病院の手術室では、消化器がんを摘出する腹腔鏡手術(お腹に開けた小さな孔から、内視鏡を挿入して行う手術)が行われていた。〈器械出し〉を担当したのは、野口建太看護師。モニター画面に映し出される術野を見ながら、医師が次に使う鉗子(腹腔鏡専用の器具)を先読みするかのようなタイミングで渡していく。小気味いいリズムで手術は進行し、滞りなく終了した。「手術の前に、患者さんの腫瘍の位置、転移の状況などを細かく理解し、頭に入れています。だから、先生が次に何を求めているかを予測して動くことができます」と野口。病院によっては、器械出しは医師の指示に従う補佐役に徹するところも多い。しかし、消化器の専門病院である同院では、医師の熟達した手技に対応できるよう、看護師にも高度な専門知識と技術が要求される。そのため野口は、疑問点があれば、事前に執刀する医師に確認するし、必要な情報は常にメモしている。野口のノートには、疾患や検査データ、手技の手順、器械・器材の種類などがびっしり書かれていた。

手術室看護には、器械出しの他に、〈外回り〉がある。外回りは、器械出し以外に必要な看護全般。手術室の準備、麻酔に使う薬の用意、患者のケアなどを一手に引き受ける。手術ごとに、器械出しと外回りの看護師が1名ずつつく体制だ。

もちろん野口は、外回りでも豊富な体験を積んできた。「外回りで大切にしているのは、患者さんの心に寄り添うことです。当院では手術の前日、当日の2回にわたり、患者さんのベッドサイドを訪問。手術の流れを説明したり、『手術が怖い』と訴える方には、できるだけ不安を解消できるような情報を提供し、『一緒に頑張りましょう』と励まします」。さらに同院では、術後の訪問も欠かさない。手術後に困っていることはないかを聞いて、そこで得た情報を手術室の看護師全員で共有し、次の看護に活かしているという。現在、野口のような手術室看護師は同院に7名。一人が1日に1件、もしくは2件の手術を担当。毎日が緊張の連続である。「緊張感のある現場だからこそ、やりがいもひとしおです。器械出しは医師の手技を支える責任感や達成感、外回りでは患者さんに寄り添い、一緒に試練を乗り越えたという喜びがあります。この仕事はやればやるほど奥深く、向上心は尽きません」と野口は話す。

正確かつ迅速な器械出しが、手術の円滑化を支え、患者の命を守ることに繋がる。

野口は、同院に入職して2年目になる。大学卒業後、看護師としての経験を広げるために、複数の病院に勤務したほか、保育園の看護師、高校の看護教員などを務めてきた。経歴は多彩だが、病院勤務での配属は、常に手術室を選んできた。なぜだろうか。「大学のゼミで、急性期看護のなかでも、特に専門性の高い手術室看護に興味を持ったんです。技術者だった父の影響もあり、職人的な看護の道を探究したいと考えました」と振り返る。しかし、同じ手術室看護でも、同院に入職した当初は、驚きの連続だったという。「まず、大学病院にも匹敵する腹腔鏡手術のレベルの高さに驚きました。そして、看護師の意識の高さ。たとえば、以前の病院では、手術の細部について先輩に質問しても、それは医師の範疇だから知らなくていい、と言われました。それが、ここでは逆に、看護師が疾患や手技について理解するのは当然で、理解度が低いと教え込まれます。ここまで看護師が手術に関われるんだ、とすごく嬉しく感じましたね」と、笑みをこぼす。

また、そのように看護師が主体的に関わることは、医師を助ける、という以上の目的がある。「看護師がスムーズに器械を手渡すことができれば、それだけ手術もテンポ良く進み、トータルの手術時間も短くなり、合併症のリスクも減ります。ぼくたちの究極の目的は常に、患者さんの安全と安楽の追求にあります」と野口は言い切る。

消化器領域に特化しているからこそ、野口たちは知識も技術も、患者への対応もどこにも負けないというプライドを持って、自己研鑽に努めている。「自分自身の技術を磨きたいですし、後輩の指導にも尽力していきたいですね。消化器専門病院の手術を支えるエキスパート集団として、もっと高みをめざしていきます」(野口)。

手術室看護で、野口が貫いている思いがある。それは、手術をする一員であるという自覚を持つことだ。「手術をするのは医師で、看護師は助手をするという考えは持ちません。たとえば器械出しであれば、自分の目で術野を見て判断し、予測して、次の行動へ繋げています」。その高い目線が、野口をさらなる成長へ誘う。

COLUMN

  • 山下病院は、消化器の専門病院であり、職員は皆、消化器ではどこにも負けないという自負心を持っている。そして、仕事に自信と誇りを持っているからこそ、〈自ら学ぼう、成長しよう〉という風土が育まれている。たとえば、手術室看護の担当シフトは師長が決めているが、学びたい手術があれば、誰でも希望を出せるという。「希望が全部通るわけではないですが、僕もチャレンジしたい手術があれば、積極的に申し出ます。やる気を認めて伸ばしてくれるので、もっと頑張ろうという気持ちになれますね」と野口は言う。
  • また同院では、看護師たちが学会や研究会に参加したり、発表したりする機会も豊富に用意。同院の看護研究の質の高さは、院外でも高く評価されている。近年の事例では、平成30年5月に開催された第30回日本消化器内視鏡技師学会において、同院の検査センター看護師の演題発表が学会長賞を受賞した。

BACK STAGE

専門性を武器にする、という看護師の生き方。

  • 看護師のキャリアには、大きく分けて二つの道がある。一つは、幅広い看護の現場にフレキシブルに対応して活躍するジェネラリスト。もう一つは、認定看護師に代表されるように、ある特定の分野で高い知識とスキルを持つスペシャリストである。
  • 手術という特殊な状況下で、医師や患者を支える看護師は、スペシャリストに属する。しかも、山下病院は消化器の専門病院であり、手術の範囲も最先端の腹腔鏡手術や難易度の高い開腹手術に特化される。まさに、スペシャリストのなかのスペシャリストとして活躍できる現場といえるだろう。
  • さまざまな分野の職人は、生涯をかけてその道を極めていく。それと同じように、看護の世界でも手術室に絞り、ただひたすら腕を磨いていくのも、素晴らしいキャリアプランではないだろうか。最先端の消化器外科手術の現場で得た知識と技能は、将来、どこの病院に進んでも応用していける武器になるだろう。

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記事投稿者プロフィール
  • 山下病院は1901年(明治34年)に一宮市に開院以来、115年以上にわたり地域医療の一翼を担い、消化器専門病院として発展してきました。 医療の進歩が著しい中...

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