患者の自立をめざすみたきのチーム力。

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患者の自立をめざすみたきのチーム力。

みたき総合病院

三重県四日市市にあるみたき総合病院。産婦人科病院として名を馳せ、地域医療の変化を見据えて急性期から回復期、療養期、緩和ケア病床まで幅広く機能を強化してきた。
その他、健診クリニックや在宅療養支援機能も揃えた、地域密着型の医療拠点だ。
回復期リハビリテーション病棟の取り組みを通じて、同院がめざす医療の形を探った。

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多職種の異なる視点を活かしたチームアプローチ。

みたき総合病院の回復期リハビリテーション病棟(44床)。ここでは、脳血管疾患、運動器疾患などの急性期治療を終えた患者を受け入れ、生活復帰に向けて日々リハビリを行っている。ある日の病棟を訪ねると、ベッドサイドで患者が着替えるのを、じっと見守っている高橋 香看護師の姿があった。「援助するのは簡単ですけど、あえて手は出しません。いつも心がけているのは、自立を促す看護。根気はいりますが、患者さんが自分でできるまで待ちますね」と高橋は話す。洗顔や食事、トイレ、歩行など、病棟内ではさまざまな生活動作が発生する。それらを可能な限り自分でできるように、患者の安全を最優先しつつ、見守っているのだ。同病棟の患者の多くは、脳卒中で手足の麻痺や言葉の障害のある人たち。しかも、高齢者が多い。「障害の残った方たちが家に帰ったとき、できるだけ自分の力で生活できるように促すのが、回復期の使命だと考えています」と高橋は言う。

自立を促すという目的は、もちろんリハビリスタッフも同じだ。「患者さんが家に帰って困らないように、当院ではできる限り入院時にもご自宅を訪問しています。そこで、ご家族の希望を聞いて、介護負担を少なくするにはどうすればよいかを考え、訓練のメニューを組み立てています」と話すのは、作業療法士の伊藤善紀である。退院前の訪問は多くの病院で行われているが、入院時にも訪問するのは珍しい。伊藤たちはそうやって自分の目で得た情報を、多職種カンファレンスで共有。医師や看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、医療ソーシャルワーカーなどがチームを組んで、患者一人ひとりのゴールに向かって動き出す。

同病棟のチームアプローチには、どんな特色があるのだろう。2人は口を揃えて、「専門職の視点の違いを大切にすること」だと話す。「どうしたら自宅に帰れるか、みんなで意見を出し合うのですが、そのとき、他職種から大事なことに気づかされることも多くあります」と伊藤。高橋も同意見だ。「他職種の専門的な指摘には、いつも刺激を受けますね。そのなかで、私たち看護師の視点は、常に患者さんの気持ちにあります。もし患者さんが訓練に不安や恐怖心を持っているようなら、それを他職種に伝え、より良いリハビリに繋げています」。

「リハビリには、ご家族の理解と参加が大切」というのが伊藤の持論。「月に一度の家族面談のときは、必ずご家族と一緒に患者さんの動作を見て、回復の目処や残存能力について確認します。そこで、ご家族にこれなら介護できそう、と思っていただくことが、スムーズな退院に繋がります」(伊藤)。

医療と生活を結び、安心の在宅療養を支えていく使命。

活発なチームアプローチにより、患者の自立を支援している回復期リハビリテーション病棟。しかし、近年は紹介される患者の医療必要度が増しているという。高度急性期病院の入院期間の短縮化により、まだまだ医療必要度の高い状態で転院せざるを得ないケースや、複数の疾患を抱える高齢者が増加しているのだ。その一方で、患者、家族の回復度への要求も年々、上がってきたという。例えば、食事もトイレも自分でできなくては、家に帰れないという人が増えているのだ。この背景には、高齢者の独居や老老介護など、在宅での介護力不足の問題がある。しかも、それを補う地域の支援体制はまだ整備されていないのが実情だ。

こうした高齢化に伴うさまざまな課題を解決するには、「地域の医療機関が手を結ぶしかありません」。そう話すのは、同院の与那覇 靖理事長だ。「まず、患者さんの紹介元である高度急性期・急性期病院との連携。紙面でやり取りするだけではなく、職員同士が顔を合わせて、患者さんの情報を双方向で確認できるような仕組みづくりを模索しているところです」。次に、与那覇が目を向けるのは、地域との連携だ。「地域には、在宅医療に熱心な診療所が多くありますが、患者さんの容態が悪くなったときに頼れる病院が少ない。まず我々が、そうした患者さんをいつでも快く受け入れる体制を作り、先生方と顔の見える関係を築いていきたいと考えています」と話す。地域の連携を深め、同院がめざすのは、患者の生活をずっと支える病院づくりだという。「家に戻った患者さんがQOL(生活の質)を維持しながら、暮らせるように支えるのが当院の役割だと考えています。そのために、この地域に不足している医療機能を積極的に担っていくつもりです」。超高齢化という時代の先端に立ち、同院は医療と生活を結ぶ病院として、果敢に挑戦を続けていく。

みたき総合病院の現在の形は、理事長の父、与那覇 尚会長が30年ほど前に構想したものだという。「当時は産婦人科を中心にした病院でしたが、少子高齢化の未来に相応しい病院を志向し、改革を進めてきました。この器を受け継ぎ、時代が求める医療を積極的に提供していきます」(与那覇)。

COLUMN

  • みたき総合病院では、在宅療養を支援する入院機能として、地域包括ケア病床(平成28年1月開設:10床)と緩和ケア病棟(平成29年6月開設:25床)を用意している。
  • 地域包括ケア病床では、今春(平成30年4月)、総合内科医が赴任。地域の在宅医と密に連携しながら、療養中に急性増悪した患者を受け入れるとともに、家族の介護負担軽減を目的としたレスパイト入院にも積極的に対応していく。一方の緩和ケア病棟は、在宅で療養している末期がんなどの患者を対象にした受け入れ体制を整えている。
  • 「地域包括ケア病床も緩和ケア病棟も、在宅療養している人の、いわば駆け込み寺です。別の言い方をすれば、在宅医療のICUのような存在です。調子が悪くなったらいつでも利用してもらい、体調が良くなったら、また家に戻っていただく。そんな施設として利用していただきたいと考えています」と与那覇理事長は言う。

BACK STAGE

多職種が互いに尊重し合うチームアプローチ。

  • みたき総合病院の回復期リハビリテーション病棟では、多様な専門職が協働し、活発なチーム医療が行われている。しかし、それは最初からあったものではない。「以前は看護師もリハビリスタッフも個人プレーで、バラバラでした。それが院外研修などを通じて、各専門職が最新のエビデンス(科学的根拠)を持ち帰るようになって、少しずつチーム医療の形ができ上がってきました」と伊藤は説明する。
  • 同病棟のチーム医療で、とくに重視されているのは、多職種の視点の違いだ。お互いが、自分と違う相手の専門性を尊重する。その上で、自分とは違う考え方に耳を貸し、率直に意見を交換するからこそ、患者にとって最善の選択肢や解決策が見えてくるのだ。〈協調性〉という以上に、それぞれの〈専門性〉を充分に発揮することが、チーム医療の現場では何よりも重要なのではないだろうか。

プロジェクトリンクト広報局

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地域医療機関や企業・教育機関等、看護職のサポーターを引き受けていただいた皆様と一緒に、看護職のためのライブ感のたっぷりな有意義な情報をお届けします。

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Yoshimi

高橋看護師、伊藤作業療法士、若いお二人の取材に立ち会いましたが、常に「患者さんがご自宅に戻った時に」ということを見据える、その意識の高さに感銘を受けました。また各専門職の視点の違いを大切にしているという姿勢からは、チーム医療のカギは、そこなんだなということに気付かされました。

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