超高齢社会に求められる教育の創造。

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地域包括ケアシステム(※)の構築に向けて、
他職種と協働できる人材を育てる。

日本福祉大学

地域社会では今、超高齢社会のなかで、医療、保健、福祉などの専門職が協働して生活者を支える体制づくりが進められている。
そんな時代のニーズに、〈ふくしの総合大学〉である日本福祉大学はどのように応えていこうとしているのか。
同大学が鍵としてとらえている多職種連携教育について話を聞いた。
※高齢者が住み慣れた地域で暮らせるように、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」の5つのサービスを一体的に提供する仕組み。

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医療と福祉が協働する地域社会のニーズに新しい教育のかたちで応えていく。

知多半島を中心にした4つのキャンパスに、8学部10学科を展開する日本福祉大学。その全学部が参加して取り組んでいるのが、多職種連携教育。地域において保健・医療・福祉などの専門職同士が協働できるような実践能力を育てる教育である。同大学が多職種連携に着目する理由はどこにあるのだろう。

医学博士であり、医師として豊富な経験を持つ藤井博之教授(社会福祉学部教授)は次のように語る。「医療の側面からいえば、病気を治せばいい時代ではなくなったことがあります。バブル経済が崩壊した頃から、生活上の課題を抱える人が増えてきた。失業、ローン破綻、アルコール依存など、さまざまな課題を抱えつつ、治療も受けなくてはならない。その人にとって、〈病気も数ある生活課題の一つ〉なのです。そして、病気も含め、解決しにくい多くの問題を抱える人を支えるために、医療と福祉の両方の視点を融合させる必要がでてきたのです」。藤井の意見に、地域福祉を専門とする原田正樹教授(日本福祉大学学長補佐、社会福祉学部教授)はうなずく。「今後の地域包括ケアシステムのあり方を考える上で重要なのは、支えていく対象者を〈患者〉ではなく、〈生活者〉ととらえることだと考えています。生活者は病気も持っているけれど、他の生活課題も持ち、なおかつ、その人自身の役割も持っている。そんな人を支えるには、医療だけではなく、医療と福祉をはじめとした広い分野に関わる多職種連携が必須なのです」。

では、同大学が多職種連携教育によって育てようとしているのは、どういう人材か。看護学部・学部長の山口桂子教授は「自分の専門性を持ちながら、多様な専門職とコミュニケーションして協働できる人材」だと言う。「重要なのは、違う職種同士がお互いに理解すること。自分たちと違う視点を尊重することを早い段階から体験することが必要だと考えています」。現在、複数学部の学生を対象とする〈ふくしとフィールドワーク〉の授業の開講が計画されている。たとえば、社会福祉学部と看護学部の学生に同時に開講するプログラムでは、ソーシャルワーカー、看護師などの立場からチームをつくり対象者をアセスメントしながら、「病気、あるいは障害をもつ方の支援プラン」を策定する授業が検討されている。他にも、〈健康づくり〉や〈街づくり〉などが計画されており、将来、一緒に働くであろう専門職同士が、学生の頃から互いを認め合い、一緒に学習する意義は非常に大きいといえるだろう。

〈ふくしの総合大学〉だからこそ実現する多職種連携教育を追求していく。

すべての学部が関わり、多職種連携教育の展開を進める日本福祉大学。そこには、どんな課題があるだろうか。「多職種連携というと、連携の仕方が注目されますが、実は重要なのは個々の専門性だと思うんです」と話すのは、原田である。「違う職種の人と協働しようとすればするほど、〈あなたは何ができるの?〉ということを問われます。自分自身のアイデンティティやスキルがないと、多職種連携チームに参加できません。したがって、多職種連携教育を進めるということは同時に、〈専門教育〉に回帰することを意味します。それぞれの専門性をさらに磨いていかねばならないと考えています」。

藤井は別の視点から意見を述べる。「地域包括ケアシステムの構築が進むなか、現場の変化に、教室の学びが追いつかないように感じています。多職種連携が欠かせないことを肌身で感じているのは、現場の人々です。地域の現場で起きていることを、教員や学生が常にリアルに感じ取っていくことが重要だと思います」。現場の課題を肌で感じるため、同大学では、全学部生が1年次から地域に出ていく地域連携教育にもチャレンジしている(詳しくはコラム参照)。学生たちは専門職ではなく、一人の住民として地域活動に関わることで、地域で何ができるかということに気づいたり、問題意識を持っていく。「地域から学生が帰ってくると、明らかに学びへの意識が変わるんです。非常に意味のある教育プログラムだと思います」と原田は言う。

地域連携教育と多職種連携教育を融合させながら、学部を超えた新しい教育の仕組みづくりをめざす。その一環として、同大学では多職種連携教育検討委員会を立ち上げ、新たな教育プログラムの開発に取り組んでいる。山口は次のように話す。「委員会では、例えば、地域包括ケアシステムに焦点をあて、病気や障害を持つ人も、一人暮らしの高齢者であっても、地域で暮らしていけるように支えるには、どんな多職種連携教育が必要か検討を重ねています。多職種連携というと、医師、看護師、薬剤師など、医療の中の連携を指すことをイメージしがちですが、本学がめざすのは、〈健康・医療〉〈福祉・経済〉〈教育・発達〉という広い領域の連携。それは、本学だからこそできる、新しい教育の仕組みだと自負しています」。その意見に加えて、原田は語る。「さらに言えば、私たちがめざすのは、8学部をカバーする多職種連携に留まりません。例えば、子どもの貧困という課題に対しては、教育と連携が必要ですし、認知症のある高齢者の権利擁護には法律家のサポートも必要です。学内はもちろん、学外との多様な連携を取り入れ、広い意味での多職種連携教育を追求したいと思います」。

地域に根ざした〈ふくしの総合大学〉だからこそできる、新しい多職種連携教育。その先には、超高齢化が進むなか、地域みんなで支え合う新しい地域コミュニティの未来が広がっている。

学部・学科紹介
美浜キャンパス 社会福祉学部 社会福祉学科
子ども発達学部 子ども発達学科
心理臨床学科
スポーツ科学部 スポーツ科学科
福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科
半田キャンパス 健康科学部 リハビリテーション学科
福祉工学科
東海キャンパス 経済学部 経済学科
国際福祉開発学部 国際福祉開発学科
看護学部 看護学科
「勤務医の頃、なかなか良くならない糖尿病患者さんがいました。そのとき、医療ソーシャルワーカーから、問題は患者さんのアルコール依存では…と指摘され、他職種からの視点の重要性に気づきました」と藤井。このときの気づきが、今日の多職種連携教育に繋がっている。

COLUMN

  • 日本福祉大学の地域連携教育。それは、文部科学省「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業:大学と地域が連携し、地域再生・活性化の拠点となることを目的とした助成事業)」の採択を受けて、平成26年度より取り組みを進めているものだ。
  • 8学部10学科すべてで、地域の課題について学ぶカリキュラムを用意。キャンパスのある知多半島の多様な地域資源を活用した〈地域志向学習〉を1年次から4年次まで積み重ね、ふくし社会を担う力を高めた学生を「ふくし・マイスター」として認定している。学生たちは体験を通して学ぶなかで、複雑で見えにくい地域課題に対し、当事者意識を持って向き合う力を身につけていく。さらに同大学のCOC事業では、教育を軸に地域との関わりを深め、さまざまな地域課題の解決をめざす〈研究〉や〈社会貢献〉にも力を注いでいる。

BACK STAGE

コミュニティ・ヘルスケア・ユニバーシティという存在。

  • 日本福祉大学が、今まで以上に地域社会を意識し、多職種連携教育に力を注いでいる。その背景には今後、医療の中心が病院から在宅に移り、病気を抱えながら在宅で暮らす高齢者が大量に生まれるという時代の変化がある。
  • 同大学がめざす多職種連携のあり方は、地域コミュニティの人々の身体的健康を支える連携だけではない。精神的な健康、社会的健康(家族、地域社会、職場において良好な人間関係を持ち、健全な社会生活を営んでいる状態)も含めて、地域の人々が満たされた状態になるよう支えていく多職種連携をめざしている。
  • 医療系の学部を揃えた〈メディカル・ユニバーシティ〉は数多くあるが、多領域が関連・連携し合いつつ、広い意味で地域社会の健康に貢献する人材を育てる〈コミュニティ・ヘルスケア・ユニバーシティ〉は日本福祉大学が唯一無二の存在ではないだろうか。

プロジェクトリンクト広報局

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地域医療機関や企業・教育機関等、看護職のサポーターを引き受けていただいた皆様と一緒に、看護職のためのライブ感のたっぷりな有意義な情報をお届けします。

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